• 『胴上げ』

    『胴上げ』
    プロ野球も白熱の日本シリーズが終わりサッカーのJ1も最終節を終えました。歓喜のシーンといえば思い浮かべるのが胴上げ。しかし「アメリカのメジャーリーグでは胴上げはない」と聞きどうやらそもそもアメリカには胴上げの風習がないようで意外な気がして驚きました。胴上げとは何なのか。主に日本やヨーロッパでみられるそうですが調べてみると起源ははっきりしていなとのこと。ただ日本では江戸時代には胴上げがあったとの記録が残っているようです。日本での胴上げの発祥といわれるものの一つが長野市にある善光寺での年越し行事で、【五穀豊穣】を祈る祭りです。新潟には【厄除け】として胴上げをおこなう祭事があります。〈上に投げることで厄を祓う〉これは稲の収穫後、良いモミと悪いモミを分けるためザルなどにモミをのせて上下に振り上げ選別していたことに由来する、という説があるそうです。稲作の文化が胴上げに繋がっているとは驚きですがあらためて日本人と稲作の結びつきの強さを感じます。また大相撲でも胴上げが行われますがこれは【神送りの儀式】とよばれ土俵に降りた神様を再び天界に送る神事です。どうやら本来の胴上げというのは空中に投げて悪いものを取り払うというものであり「ハレ」の状態から「ケ」の状態に戻すといった意味をもつようです。“神がかった”の人を空中に投げて“ひと”に戻す。優勝や合格のときに胴上げが行われるのにもつながっているように思います。
  • 『まんがの日』

    『まんがの日』
    「まんがの日」というのがあるのをご存知でしょうか。20年前に、11月3日を日本漫画家協会と出版社5社が協力して「まんがの日」に制定しました。「漫画を文化として発展させたい」との想いから文化の日と同じ日付に定められたそうです。またこの日は手塚治虫先生の誕生日でもあります。よく日本における漫画の原点とも言われるのが京都の高山寺に伝わる鳥獣戯画。動物たちが人間のような動きをしている姿を、ユーモアたっぷりに表現しています。しかしながらこの絵巻物には謎も多く誰がいつ、どういう目的で描いたのかなど、実は不明なのだそうです。観る者の想像を掻き立てる、それも魅力のひとつかもしれません。鳥獣戯画には様々な動物や霊獣などが登場しますがその中でもウサギと並ぶ有名キャラクターの蛙。こちらのコラムでもしばしばご紹介していますがあらためて蛙が縁起の良い生き物だといわれている事をお伝えしましょう。蛙=カエル=返る・帰る蛙をこのように解釈し【無事帰る】とか【お金がかえる】などの意味をもつといわれ、また前に跳ぶことから【出世】の象徴とされます。海外でも蛙を縁起物とする国は多く、【豊作】や【子孫繁栄】を象徴したり【神の使い】としたりするところもあるそうです。稲作を中心とした生活を送る日本人にとって田んぼに住むカエルは身近な生き物であり、その愛嬌のある姿から、鳥獣戯画のメインキャラに採用されたり縁起の良い意味を持つようになったりするのもうなずける気がします。また、蛙に【帰る】という縁起の意味を持たせたのもある意味「語呂合わせ」というユーモアの成せる技。この「まんがの日」にあわせて“ユーモアの視点”から生活を眺めてみると普段は気にも留めないことや当たり前に思っているものももしかしたら、鳥獣戯画に描かれる動物たちのように生き生きと見えてくるかもしれないな、なんて考えてしまいます。
  • 『七箇の善日』

    『七箇の善日』
    生活の中でみられる縁起いい日、というのは例えば「六曜の大安」や「選日の一粒万倍日」など割と多くの人に知られているものからあまり知られていないであろうものまで意外とたくさんあります。 そういう「吉日」にこだわりすぎても弊害がおこりますから過去に、朝廷や政府から指摘を受けていたり、識者の間でも様々な意見があったりするものもあるようです。と、そのような前置きをさせていただいた上で豆知識として今日は「七箇の善日」(ななこのぜんにち)のご紹介です。昔の暦の最下段に書かれていた日々の吉凶を表した歴注。そこにあった7つの吉日の総称が「七箇の善日」です。【天赦日】(てんしゃび、てんしゃにち)百神が天に昇り万物の罪を赦す日。【神吉日】(かみよしにち、かみよしび)神社への参拝など神事に関することがよいとされる。【大明日】(だいみょうにち)天地が開け、万物が太陽の光に隅々まで照らされる、とされ太陽の恩恵を受けた大吉日。特に婚礼、建築などに良いとも。【鬼宿日】(きしゅくび)鬼が外に出ないため吉日。お釈迦様が生まれた日でもあるそうです。【天恩日】(てんおんび、てんおにち)一度回ってくると5日間続く吉日。万事が成長しやすく徳を得やすいとも。【母倉日】(ぼそうにち)母が子を育てるように天が人を慈しむ日。特に婚礼はよいとされます。【月徳日】(つきとくにち、がっとくにち)月ごとの福を司るといわれます。特に建築関係によいといわれます。例えばこの中の「大明日」にあたる日は月に半分以上あったりするなど調べてみると縁起の良い日は意外と多いことが分かります。気にしすぎると何もできなくなってしまいそうですが日常を楽しむ“スパイス”として覚えていてもいいかもしれませんね。
  • 『金魚のいる夏』

    『金魚のいる夏』
    幼い頃、家の下駄箱の上に飾り気のない水槽があって金魚がゆらゆらと泳いでいた遠い記憶。キャリコ琉金や和金、だったでしょうか。今思うととても昭和らしい情景です。金魚は人が作った魚。中国が発祥ですが日本でも多くの品種が生み出され2015年の時点のデータですと組合が認定している日本産の品種は33種にもなるそうです。たいへん日本人に愛されている金魚。江戸時代の初期にはまだまだ贅沢品で、【暑気払い】として金魚を楽しむのは豪商などだったようです。江戸の中期には庶民にも広まりますがガラスが普及する迄は桶や火鉢などが飼育に用いられたため上から見た姿の美しさが重要とされました。上から見る金魚といえばランチュウを思い浮かべますが、私も大好きな品種のひとつです。ところで、このように金魚は、心を癒し涼を呼ぶだけでなく縁起が良いといわれるのもご存じでしょうか。日本では特に紅い金魚が【病除け】【魔除け】のご利益があるとされました。戦時中には【爆弾避け】の噂が広まった事もあったとか。また原産地中国では【金運上昇】の象徴なんだそうです。どこかノスタルジックな金魚たち。金魚のいる懐かしい夏が私たちを元気にしてくれるような思いがします。
  • 『神の実、桃』

    『神の実、桃』
    旬を迎えた桃。果物売り場を通りかかるといい香りに癒されます。中国が原産といわれる桃。日本では弥生時代の遺跡から種が見つかっているそうですが主に観賞用や儀式用だったと言われます。中国に「仙人が桃を食べて不老不死になる」という話があるそうです。桃は「仙果」と呼ばれ【不老長寿】の縁起をもち実だけでなく枝、葉、花も【邪気を祓う】とされます。また日本でも桃は神話に登場します。「オオカムヅミ」という神様がいますがその名はイザナギが与えたものであり古事記では「オオカムヅミノミコト」と記されます。黄泉の国で魔物に追われる身となってしまったイザナギが逃げる際にそこに生えていた桃の実を3個投げつけたところ魔物は逃げていったという話。このことからイザナギは桃の実に「オオカムヅミ」と神名を授けたのだそうです。つまり「オオカムヅミ」は桃であり神様なんだとか。また、このように桃に【魔除け】の力があるとされるお話は他にもいくつかあるようです。おとぎ話の『桃太郎』は室町時代にできたものですが上記のような桃が持つ魔を祓う力に関連して作られたと思われます。興味深いですね。桃は神の実、なのです。
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