『啓蟄のころ』
北風の厳しい季節から日差しの温もりを感じる時期へと移り変わり
二十四節気の3番目「啓蟄」(けいちつ)を迎えます。
今年は3月5日から3月20日頃となります。
江戸時代に出版された暦の解説書といえる暦便覧には
陽気地中にうごき
ちぢまる虫、
穴をひらき
出ればなり
と記されます。
大地が温まり地中に潜って冬をやりすごしていた生き物たちが
姿を現してくるころです。
この啓蟄のころをさらに細かくわけた七十二候でみてみます。
初候 【蟄虫啓戸】(すごもりむしとをひらく)
冬眠していた生き物たちが出てきて春の日差しの中、活動を始めます。
次候【桃始笑】(ももはじめてわらう)
桃の花が咲き始めます。
咲くことを「笑」で表現していて現代の私たちにはそれがなんとも
温かく感じられますね。
末候【菜虫化蝶】(なむしちょうとなる)
青虫が蝶へと姿を変えます。
啓蟄のころは一雨ごとに温かく感じられるようになる時期で
雷も発生します。
立春を過ぎてはじめての雷を「虫出しの雷」と呼ぶのだそうです。
「虫」とは昆虫を指すだけでなく生き物全般のことであり
冬を耐え抜いた彼らが雷で目を覚ます、と表現しています。
小林一茶も初雷=虫出しの雷の句を詠んでいます。
初雷は春の季語です。
「初雷や乳母がもてる年の豆」
節分の豆を「虫出しの雷」があった日に【無病息災】を願って
食べる風習があったようで、その点でも大変興味深い句ですね。