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『虫の声』
私たちが秋の訪れを感じるもののひとつに「虫の声」があります。唱歌の「虫のこえ」の中で歌われる虫たちは、まさに秋の代表といえるでしょう。マツムシ「チンチロチンチロ…」スズムシ「リンリン…」ウマオイ「チョンチョン…スイッチョン」他にも身近なところでは「リリリリ…」というエンマコウロギの声もよく耳にしますね。昔、風鈴など鈴の音には【邪を除ける力】があると信じられました。鈴や鐘の音が聞こえる一帯を清めるのだそうです。昔の人はスズムシの鳴き声にも魔除けの意味を込めたのでしょう。スズムシが鳴き始めると風鈴を外す、という風習があったとききました。夏の間、【空間を浄化】していた風鈴にかわってスズムシがその役を引き受けたのかもしれませんね。子供のころ秋のお祭りの時期に祖母の家に行くと飼育されていたスズムシが美声を響かせていました。お囃子とスズムシの声。人々の熱気と、神聖な夜の空気。日本らしい、そういう原風景が私の心にあることを久しぶりに思い出しました。 -
『クリスマスツリーの日』
「クリスマスツリーの日」というのがあるのをご存知でしょうか。1886年12月7日、明治時代のこの日に、横浜にあった明治屋で外国人船員のために日本初のクリスマスツリーが飾られたとされます。この出来事に由来し「クリスマスツリーの日」が設けられました。クリスマスツリーといえばもみの木でしょう。しかし元々ツリー自体はキリスト教由来のものではなくもみの木でもなかったようです。諸説ありますがクリスマスツリーは北ヨーロッパのゲルマン民族が行っていた「ユール」という冬至の行事に由来するのだとか。その祭りではもみの木ではなく樫の木が使われていたそうです。樫の木のような「常緑樹」は冬でも青々としているため【永遠】をあらわす縁起の良いものとされていました。こういった祭事や信仰がキリスト教の布教活動と結びつけられていって「キリスト教のクリスマスツリー」へと変化していったといわれます。常緑樹を祀る風習は中国や古代エジプトなどでもみられたそうです。私たち日本にも松や橘など常緑樹を【生命力の象徴】であり【繁栄】や【長寿】の縁起良いものとする文化がありますからもしかして知らず知らずのうちに「ツリー」に共感するものを感じとっていたかもしれませんね。 -
『二十四節気 夏至のころ』
先週の火曜日に夏至を迎え二十四節気も第10となりました。当店のコラムでも時々書かせていただいているこの「二十四節気」ですがはじめて聞く方も多いと思いますので改めて説明いたしましょう。「二十四節気」とは一年を4つの季節に区切り、それぞれをさらに6つに分けた暦のようなものです。本来、中国の黄河中下流域にある平原を中心としたあたりの気候が元になっているので少し日本の季節感とは違いを感じるところもあるようです。24つの節気にはそれぞれ名前があり、第1が「立春」その立春から数えて10番目が「夏至」第24で「大寒」となり「立春」に戻ります。また「二十四節気」をさらに各3つずつ区切ったものを「七十二候」といい、季節の特徴を細かく知ることができます。今は「夏至」のころで、その「夏至」の期間の七十二候は下記のようになっています。【初候】6月21日~25日ごろ「乃東枯」(なつかれくさかるる)ウツボグサが枯れるころ。これからまぶしい季節が来るというのに枯れていく花。せつない想いが寄せられているようです。【次候】6月26日~30日ごろ「菖蒲華」(あやめはなさく)アヤメの花が咲くころ。【末候】7月1日~6日ごろ「半夏生」(はんげしょうず)カラスビジャクが生えるころ。この時期に入る前に田植えを終わらせたほうがよいといわれます。二十四節気や七十二候をみると古の民たちは季節の移ろいをとても細やかに観察し、自然の声をきいて農作業の基準としていたのがうかがえます。人もまた自然の一部。この当たり前のことを忘れてしまってはいけないなとあらためて考えます。